そのご。【杉のターン】

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「にしても、俺投げ飛ばすなんざ大した腕っぷししてんじゃねーか」 「そんな事ありません。ただ咄嗟の事でカッとなっただけです。火事場のバカ力的なヤツですよ」 腕の中で小さくもがきながら綾斗は否定する。 「馬鹿云ってんじゃねー。俺がんな程度の奴にこんなヘマするかよ。どうだ?お前俺等とつるまねーか?」 その言葉に、再び綾斗の動きが止まった。 「俺等って…丸さんも一緒ですか?」 「丸さんって鬼丸の事か?」 「はい。自然の流れでそうお呼びしてます」 「なんかムカつくな」 「それより、先ほどの話ですが僕もお二人とつるめと?」 「そーだ」 頷く杉に綾斗は首を横に振る。 「僕なんか無理ですよ。それに僕がヤンキーの一員になったら姉さんに怒られますもん」 「お前知らねェのか?ウチの学校のトップ、九重静華だって云われてる話」 「ハァ!?姉さんが!?」 「煩ェ。耳元で騒ぐな」 激しく混乱している綾斗に、杉は溜め息を落とす。 「オイ眼鏡、今日の放課後、時間空けとけ」 「嫌ですよ。なんで僕がアナタの云う事聞かなきゃいけないんですか。アナタに眼鏡壊されたってのに」 綾斗は壊れた眼鏡を掲げながらブスっとしている。 「だからその眼鏡、俺が弁償してやるつってんだよ。それともいらねェか?」 「いる!!」 即答した理由は、綾斗の家が姉と二人暮しで貧乏なせいだ。
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