そのろくのおまけ。【恭犬のターン】

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俺はウザそうに溜息を吐いて見せる。 「綾斗君、さっきから煩いよ。俺に文句があるんなら家に帰れば」 「既に帰ってるからこそ、今!この場にいるの!!」 俺に噛みつきながら、バン!と畳を叩く綾斗君。 あー超面白ぉ。 打てば響く様にツッコミが飛び出す。 そしてくるくる変わる百面相。 このやり取りがしたくてワザとふざけてるのに、なんで気付か無いんだろ? …あ。文句言いながら律儀に俺の茶淹れなおしてる。 …この温かさはクセになるわー。 「これ飲んだら帰って下さいね!」 どん!と中身が零れそうな勢いで床板に湯呑を置く。 不機嫌丸出して云う同じセリフはこれで何回目だろう? ――――あ、30回目か。 「了解了解」 生返事をしながら、近くにあった座布団を頭の下に敷き目を瞑る。 「ちょっと!?昼寝する体勢に入らないで下さいよ!」 気付いたか。 でも本当に眠りはしないよ。 キミを落とす為の独り作戦会議始めるだけだから。 「綾斗君お休み」 「起きろぉ!!」 好きな子の非難の声が嬉しく感じるなんて俺も鬼畜番長の名がすたるかな? ゴロリと向きを変え綾斗に背を向ける。 「あっ恭犬さん!…?もしかして、もう寝ちゃったのかな?早っ」 綾斗君の可哀想な声。俺得。 「あーもう。…しょうがないなー」 諦めた様な溜め息が漏れた。 「…縁側の戸開いたままだし…このままだと風邪引いちゃうと悪いし…」 「なにか掛けるもの…」と呟く綾斗君が畳から腰を上げる様子が分かる。 彼の甘い優しさに、俺の表情は完全に緩みきっていた。 俺、キミの優しさ中毒者になっちゃった。 これからもなりふり構わ無いで補充させて貰うね。 九重家の縁側で心地よい風が恭犬の頬をサラリと撫でた。 そのろくのおまけ終わり。
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