真夏日の炎天下シンデレラ

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真夏日の炎天下シンデレラ

山々の緑も、天候不順のみぎり雨に打たれて色濃くなったのも電光石火で火のない心に着火したかのようなモクモクと入道雲が空を彩る。 白い雲といっても白一色ではない胡粉色(ごふんいろ)乳白色(にゅうはくしょく)生成色(きなりいろ)等とこの複雑さは今回の物語の女性主人公カイリの気持ちを示唆している 私立創立学院高校硬式野球部専用グランドから声が聞こえてくる。 創立学園高校硬式野球部は春の選抜にも出場した強豪高で夏も優勝候補の一角でその強力なメンバーから黄金世代と呼ばれている。 「1ソーレー2ソーレー3ソレー4ソーレイッチニサンシーニーニッサンシー」 「オイショー」 「サードガッチリな」 海斗「カイリ、シートノック頼むわ、相変わらず良い手してるよまた相当振ったな」 この少年は花道海斗15歳高校3年生186センチはある大型右腕投手だ。 エース番号1を背負うがエースの自覚はなくエースは同期の山井だと自負している。 同じく羽衣海里(はごろもカイリ)は3年生女子MGで一人称が僕の僕っ子で海斗に惚れている、身長170センチと高いのもコンプレックスだし余り可愛くないのもコンプレックスである。 カイリ「じゃーサード三上行くよ、キャッチャー六角君に返球してね」 「カキーーン」 「バシッ」 「ビュン」 カイリ「早急甘いよ逸れてる次、ショート宇佐美」 「カキーーン」 「バシッ」 「ビュン」 カイリ「宇佐美いいねー」 このカイリのノックは通常の高校監督がノックできない程実践的な打球を飛ばす事が出来る。 サードゴロにしても150キロで投げた球を芯で捉え思いっきり引っ張った痛烈な打球だ。 普通のシートノックの様な甘いゴロは試合では先ず来ない。 フライも特別で自在に球が伸びるバックスピンの調整をしたりポップフライも打てる。 グラウンド整備もカイリの仕事で完璧でマウンドの高さ硬さ、傾斜角も甲子園を完全再現している。 そして部活が終わり一人でノックの練習に打ち込む、あれだけのノックは毎日練習しないと出来ない芸当だ。 其処へ海斗がやってくる。 海斗「照明消えないと思ってたらカイリがバックネットに向かってノックの練習してたのか。これからは俺も付き合うぜお前が打って俺が取るんだ」 カイリ「でも疲れているだろう」 この練習も終わりカイリは帰路を辿ると一匹の猫がカチューシャをくわえて逃げてしまった、しかしそれも安堵に変る、直ぐ近くの店の中に入って行ったからだ、店の人に頼もうとドアを開ける。 カイリ「すみませんお宅の猫がカチューシャを持って行ってしまったのですけど」 店内は家具が沢山おいてあり家具屋さんだと認識はした。 魔女「ようこそ魔女の館へお嬢ちゃんカチューシャは返すよ、お詫びに叶えられる願いならどんな願いでも叶えてあげるよ」 カイリ「胡散臭いねなら私を可愛らしくしてよ、無表情だから表情豊かにしてみせてよ」 魔女「お金が沢山欲しいとかそういうんじゃないのかい?」 カイリ「お金なんていらないさ今言った事だけ叶えられるなら叶えて見せてよ」 魔女「じゃあ此方のベッドに寝ておくれ」 すると顔にマスクを被らされ15分経過した。 魔女「まぁ成功だわね、今夜中に顔に変化が起きるだろうよ」 そして帰宅して就寝... 24時を過ぎた頃顔に違和感があったが夢の出来事の様に忘れてしまった。 異変に最初に気付いたのは両親だった、一重が二重になり歯並びも前より良くなっている気がするし笑顔もでるようになった。 そして学校に着くと男子からのメルアドの交換が殺到した。 海斗「カイリどうしたんだその顔、整形?いやこんな短期間で出来る訳ねーよなそれがお前の本当の姿なのか」 カイリ「まぁそうだよ」 部活にて サナエ「カイリ先輩一寸(ちょっと)いや一寸(ちょっと)所じゃない位変りましたね」 サナエは高校2年生のMGでカイリ同様に海斗が好きなのだ、その事はカイリも知っていてカイリが海斗を好きな事も知っている。 カイリ「そうかい良く言われるよ」 カイリは笑顔でそう答える。 そして二人だけの秘密特訓が始まる。 海斗「何かカイリって滅茶苦茶ポテンシャル高い人だったのな、俺は身長あるから気にならないけど身長高くてモデルみたいになっちゃって、でもその両手は一生懸命バットを振ってきた間違いなくカイリの手だよ」 カイリ「あぁ手も綺麗になれば良いのにね」 カイリは笑顔で答えた。 なんだか何時もより沢山笑えた様な気がしたが、カイリは帰り際にこの顔を変えた魔女の店によってから帰宅した。 魔女の店に寄ったのはある事を知りたかったからだ。 朧月夜 言ノ葉は月の雫の恋文(しらべ)、哀しみは泡沫(うたかた)の夢幻 カイリは自宅の学習机に座り事のあらましを振り返る。 何度も、何度も、真剣に考えた。 そして翌日普通に登校した。 山井「よう、カイリ今日は部活でるのかよ?」 カイリ「勿論出るさ、何時もの事じゃないかなんでそんな事聞くんだい?」 山井「まっまぁ特に意味はねーんだけどよ、気にしないでくれ」 教室を出ると山井は海斗に捕まる。 海斗「山井じゃねーか、お前俺の事嫌いな癖にうちのクラスに何の様だ?カイリと話してたようだが」 山井「お前の事が嫌いな事に変りはねーな、ああ、カイリが今日部活にくるか聞いてただけだ」 海斗「そんなの聞くまでもないだろう、カイリが部活休んだ事何かねーんだぜ」 山井「それは俺も知ってるけどカイリ変っちまっただろ、それから何かつまらなそうな雰囲気だしてるから気になってよ」 海斗「つまらなそうか、確かにそうだな、俺も何か何時もと違って楽しくないな」 そして放課後部活にて カイリ「ライト山井行くよ」 「カキーン」 これはセカンドが下がれば捕球出来そうなポップフライだ前進してダイビングキャッチをしようとするも届かずボールは地面に落ちる。 此処で何時もならカイリから一声掛かるのだが何も言われなかった、怒られなかったと思いきや。 小倉監督「コラーっ山井、打球が飛んできてから判断してたら遅い、ボールをバットが捉えた瞬間にコースを予測して移動しろ、俺達は春の甲子園に出場してるんだ何だ下手なプレーは見せられないぞ!」 山井「ウィース」 山井は帽子を取って監督にお辞儀をする。 これには横で投球練習をしていた海斗も気付いていた。 そして部活後の秘密特訓 バックネットに海斗が立ちマウンドからカイリの痛烈なノックが海斗の足元を襲うも、足元を襲った打球は海斗は全く捕球出来ない、通常ならカイリからアドバイスが入るがこの日は全くなかった、丸で魂がどっかに行ってしまったかの様に。 海斗「なぁカイリ俺はこの通り身長も高くて足元を狙うゴロとのボールの距離が遠くて捕球が苦手何だ何か良い方法はないか?」 その質問に対してカイリは(うわ)の空だ 海斗「カイリ!!」 カイリはハッとした。 カイリ「右投手の場合投球フォームが終了して右足が地面についた瞬間腰を落として守備体系をとるんだ、君はそれが遅いから打球に対応出来ない、いいかい?ピッチャーは9番目の内野手なんだゴロ取れないならマウンドから降りて貰うよ」 海斗「なるほど、確かに意識していなかったなやってみるよ」 カイリは海斗の異変にも気付いていた何時ものスキンシップの様な会話をしてこなくなった何より二人の時は生き生きとしている海斗だがそれが丸で無い。 そして翌日 その日からカイリは学校に来なくなった。 最初こそは周囲も騒いでいたが徐々に落ち着いてくる、海斗も何度もカイリにメールを送るも返信は来ない。 部活にて サナエ「今日は私がノックしまーす」 山井「ラッキーサナエのノックなら楽勝だ」 サナエ「サード三上さんいきますよ」 「カキーン」 それは痛烈とは程遠い詰まったゴロだ 三上「丸で守備が上達したようだぜ、サナエのノックは」 海斗がサナエのノックに気付き声をかける。 海斗「サナエ、お前にはうちのノックは無理だやりたきゃ俺と居残り練習をするんだ」 サナエ「海斗さんと居残り練習!ハイ、やりますよ」 そして居残り練習が始まった。 「カキーン」 「カキーン」 海斗「駄目だ、駄目だ、サナエの華奢な体からではノックのスピードはたかが知れているもっと腰を使って体全体で打つんだ」 サナエ「ハイ!」 「カキーン」 海斗「うん、大分良くなった、カイリのノックには敵わないけどな」
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