たとえ星になっても、君と会いたいよ。

1/1
10人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
夜、私は空を見上げる。満天の、星空を。 あの星の中に、ナーチがいるのかな。 つい、そんなことを考える。 あの日から、私の心は空っぽだ。 二年ほど前に、私の愛犬ナーチはこの世を去った。 その時高校生だった私は、今では大学生だ。 ナーチと、また会いたいな。 寂しくてどうにかなってしまいそう。 ある日、なんだかナーチに会えるような気分になって、家の外に出てみた。 少し、辺りを見渡す。 いるなんて、そんなわけないか。 自嘲したくなるほど、馬鹿な考えをしたと思う。 死者はもう戻ってこないんだから。 そうやって、家に入ろうとしたとき、どこからか子犬が飛び出してきた。 「ナーチ?」 それは、何か私の心に懐かしいという思いが込み上げてきたからの言葉だった。 泣きそうな、嬉しそうな、そんな声で私はナーチに訊く。 そう言うと子犬は嬉しそうに、ついついしっぽを振って、鳴き声をあげた。 「わん!わんわん!」 その鳴き声で、ナーチだって確信した。 「ほんとに、ナーチだ。ほん、とに……」 私は本格的に泣き出してしまう。 もう一生会えないと思っていたナーチが、今目の前にいるのだから、それは仕方のないこと。 「わんわん?」 心配そうに、ナーチは私が触れられるほどの距離まで来る。 私は感極まって、おもわずナーチを抱きしめる。 また会いたかったから。 ずっと会いたかったから。 ほんとに、またナーチと一緒になれたんだ。 嬉しい以外の言葉が見つからない。 私は、幸せ者だなぁ。こんなに幸せでもいいのかなぁ。 「会いたかった。会いたかったよぉ。ナーチ……」 嬉しすぎて、幸せすぎて、それ以外の言葉が見当たらない。 やっと会えたんだから、またナーチと一緒にいれるか、訊いてみなくちゃ。 「また一緒に居ようね?」 「わん!」 ナーチが嬉しそうに私に飛びつく。 また、一緒に居られる。 そしてナーチは、また私の家の一員になったんだ。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!