第10話 不倫の代償

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相手にしてみれば、今までと変わらない付き合いをしていたのに、ある日から、急に不機嫌になり数日後、長くて数週間後には別れを切り出されるのだから、理不尽極まりないのだが、理恵にはちゃんと理恵なりの理由がある。 それでも、相手に非があるわけでは無い事を理恵も理解しているので、やはり、心苦しい気持ちにはなる。 理恵が祐介から電話を受けたのは7月の2週目だった。先週も祐介とは会っている。Lineで事前に都合を確認した上で、電話が掛かってきた。 「少し話しがあるのだけれど、今週どこかで食事できるかな」 「何のお話ですか?」 「それは会った時に話すよ」 それだけで、内容が別れ話だと判った。 初めて振られることになるな、と思った。 でも、悔しいという気持ちも無く、なんと気が楽なのだろうと思ってしまった。 どうせ、不倫の関係で長く付き合いができるとは思っていなかった。 祐介が指定したレストランは品川プリンスホテルの『DINING & BAR TABLE 9 TOKYO』だった。 祐介との最後(だろうと思ていた)の食事には、思い切りオシャレをした。 理恵を見た祐介は、「美しい!」と感嘆した。 だからと言って、話しの内容が変わることは無かった。
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