第11話 サマープール

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『明日香さん、京浜東北線一本で東京駅まで行けるのに、義男は相変わらずだなぁ』理恵は呆れた。 たぶん、義男が送ると言いだし、明日香も本音は電車の方が良いと思っただろうに、義男の好意を喜んで受け入れたのだろう。 明日香が喜ぶであろうことを色々考え実行するのが義男の気遣いで、それを喜んで受け入れてあげるのが明日香の気遣いだ。 『私は少し義男への気遣いが足らなかったかな・・・』明日香と義男の付き合いを思い浮かべ、少し反省した。(実際には、少しどころか全く気遣っていなかったのだが) 『結構、順調な付き合いね。慎重に進めよう。でも、チャンスは明日香が帰ってくるまでだ』理恵はそう考えた。 義男に会ってから、理恵は他愛の無い話しをした。別れた石井祐介の事(愚痴や恨み)は話さなかった。そもそも、恨みなど無かったし、終わった恋に構っている時間は無い。きっぱり忘れて次に進んでいた。 繰り返すが、そこがウジウジと引きずる男性と、終わった恋を振り返らない女性の違いだ。
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