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第12話 残暑
明日香は、東京へ戻る前日に、ちょうどお盆で帰省してきた既婚の友達から連絡があり、何人かで集まることになった。その為に、戻るのが2日伸びてしまった。
『こだま』を使うつもりで席の予約もしておらず、日程の変更に手間は無い。
ただ、お盆前には戻ってくると言った義男に申し訳ないと思った。でも、義男がそんなことに文句を言うわけもない。戻るのが遅れることを伝えると「せっかくの帰省なんだから、ゆっくりしておいで」と言ってくれた。本当に、自分(明日香)に優しい。
色々な意味で、女性としての自信を少し取り戻させてくれたのは義男だ。明日香は義男に感謝していた。
結局、お盆の真ん中での移動になったが、新幹線はそんなに混んでいなかった。
東京駅まで義男が迎えに来ていた。八重洲中央口を出ると、義男が明日香を目ざとく見つけ、駆け寄って来てキャリーバックを引き取った。
「いつもありがとう。これ、ご要望の駅弁『富士の味覚』です」そう言って、手に持っていた紙袋を見せた。
義男は、昼食に静岡名物の駅弁を食べたいと明日香に言っていたのだ。
「楽しみだね。ホテルでゆっくり食べよう」
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