第12話 残暑

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義男は理恵を抱いた。それも本人によると、一晩中何度も。心臓を締め付けられるような嫉妬の感情が湧き出てきた。 理恵と付き合うかどうか、義男の判断に任せるのが一番自然だ。でも、もし、義男が私(明日香)を選んだ時、理恵に『実は義男と付き合っていた』などとは今更言えない。 それに、義男が私を選んだとしても、私が今までと同じような気持で付き合えるのだろうか。 スマホの中で、理恵の横で微笑んでいる義男がどこか遠くに感じられてきた。 ・・・・ 金曜日の昼過ぎ、明日香から少し熱っぽいので週末のデートを延期して欲しいと連絡があった。 義男は残念な中に少し安堵する気持を見出(みいだ)していた。また、勃起できないかもしれない、と不安だったのだ。 理恵を抱いてから10日になる。とにかく早く決着を付けないと。 『理恵にはお断りの連絡をする。明日香には明日香の留守中にあったことを正直に話す』 これだけだ。たったこれだけの事なのだが、いまだにウジウジしていた。 その時、理恵から「話したいことがある」と連絡あり、「こちらからも話があるので、丁度良い機会だ」と言って会うことになった。
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