第12話 残暑

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夕方、仕事で飯田橋へ外出していたので、19時に神楽坂のビストロで待ち合わせをした。アラカルトで数品頼み、ワインを飲んだ。 食事中はどちらも本題を切り出さない。以前付き合っていた時の思い出話で食事は進んだ。 食後のデザートとコーヒーが運ばれてきたので、義男が本題を話そうとしたら理恵が先に話し始めた。 「仲の良い先輩がいて、あなたのことを相談したの」 「相談?」 「うん、元彼とヨリを戻したいと思っているって」 「そんなことを会社の人と話すの?」 「人によりけりよ。その先輩はとても良い人で信頼してる。この間の二人の写真を見せて、あなたに抱かれてとても気持ち良かった事も話したわ。なのに返事が無いって相談したのよ」 「それは相談では無く、愚痴だろう。そんなことまでねぇ。で、先輩は何て言ってたの」 「女性の相談って、答えなんか期待してないわ。話を聞いてくれるだけでいいのよ。でも先輩は、上手く復縁できるといいねって、言ってくれた」 「その先輩は、男性? 女性?」 「女性! 男性にこんな相談する訳ないじゃない。高橋明日香さんって言うの。綺麗な方よ」 「え?」
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