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「その···、苦しそうに何かブツブツ呟いておられますので。ご気分悪ければ駐めましょうか」
「いや、大丈夫です。ブツブツなんて気味が悪いですよね。色々あって・・・すみません」
「いえ、体調に問題無いのでしたら、いくらでもお好きにこの空間をお使いください。タクシーはそれが出来る場所ですので」
「ありがとう」
運転手が話しかけてくれて良かった。奈落の底に落ち込んでいく思考が少しリセットされた。
タクシーは新宿の高層ビル街を通過していた。『何をしてるんだろう、俺は』タクシーの窓からビルの夜景を見ながら義男は深いため息をついた。
息苦しい気がして窓を少し開けた。残暑の熱気がまとわりついてきた。
第12話 残暑 完
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