第13話 9月の夕陽

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その僅かの迷いの期間に、明日香のほうから(事実を確認する)電話があった。 いっその事、罵倒でもしてくれていれば気が(らく)だったのに、明日香は義男に気を遣って話をした。その明日香の辛い気持が手に取るように解り、申し訳ない気持で、義男はなんの言い訳もできなかった。 それから3週間、明日香とは会えていない。 そして、今日、9月9(金)の夕方、いつもなら仕事が終わる頃に明日香から「少し距離を置かせてください。理恵ちゃんは私の大切な後輩です。傷付けないでくださいね」と連絡があった。 大切なモノが手から(こぼ)れてしまった事が判った。 「江口(義男の名字)、緊急の会議だ。定時後で悪いが、参加できるか?」リーダが声を掛けてきた。 「ええ、構いません。どうして(参加出来るかと聞くのですか)?」 「いや、いつも週末は早く帰っていたから。なにか大切な用事があるのだろうと思って」 明日香と付き合い始めて、よく週末に合っていた。なので金曜日の定時後には仕事関係の予定を入れないようにしていた。 でも、もうそれも、必要なくなってしまった。
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