第13話 9月の夕陽

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母親は明日香の東京での仕事と暮らしを心配していたのだ。就職してから、あまり笑わなくなり、直ぐにイライラしていた、と言った。 「そんなにしんどいなら、静岡に帰っておいでよ、と言おうと思っていたのだけど、心配なさそうね」 仕事のプレッシャーでいつも切羽詰まっていたのだろう。 同じような事を、帰省の時に集まった友達からも言われた。 「どうして? 何も変わってないと思うけど」 「うん、お話の内容とかはね。でも、今までは何となく話に加わるために、って感じだったのに、同じ内容でも楽しそうに話している」 どちらも義男のおかげだと思った。正直に付き合っている人がいると話しをし、写真も見せ、盛り上がった。幸せな時間だった。 怒りが頂点になると、楽しかった時間を思い出す。楽しかった時間を思い出すと悲しくなる。悲しくなると、腹が立ってくる。そして怒りが頂点に達する。 この感情が明日香の中でぐるぐる回っていた。 義男と会っていないので、仕事にも影響があるだろうと覚悟していた。以前のようにノルマのプレッシャーに追われ、暗い日々を過ごすのかと。
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