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第17話 終わりの始まり
12月の第2水曜日、母親から明日香に電話があった。いつも週末に電話をしていたので、平日の電話は珍しかった。
母親が、いつもとは異なる辿々しい世間話を続けていたので、明日香が不審に思い「ねえ、なにか用事があるのでしょう?」と話しを遮った。
「うん・・・実は・・・」
なんと、要件は”胃癌で手術をするのだが、その事前説明に親族の立ち会いが必要なので、参加してくれないか”という内容だった。
明日香はそこで初めて母親が胃癌だった事を知った。
「何故、いままで言わなかったの!」明日香は怒った。
母親は「大したことないのよ、手術して切れば、ほとんどの人は治るのよ」などと子供のように言い訳をした。
「手術はいつ?」
「来週火曜日」
「説明は?」
「明後日の金曜日の9時。帰ってこられる?」
「当たり前でしょう。明日、帰るから」明日を午後休にして実家へ帰えろうと思った。
ただ、明日香はまだ会社にはいるが、既に定時後だ。これから、明日の午後休を調整するとなると結構大変だ。
せめて昨日、いや今朝言ってくれていれば・・・・。
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