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職員室と書いて『パラダイス』と読む。
中学までは『職員室はできれば行きたくない・近づきたくない・呼び出されたくない』の三拍子がそろっていた。
だけど高校になった今、職員室にいる時の私はついつい頬が緩んでしまう。
教室では決して見せない良い笑顔をしていることだろう。
「……なにニヤニヤしてるんだ」
低いけれど聞き取りやすい声でそう言ったのは、担任教師の八汐与一先生だ。
体育教師特有の年中日に焼けた肌に、黒髪短髪、キリリとした目元によくよく見ると整った顔立ちは時代劇の俳優っぽい。
ジャージを着ていてもわかる適度に筋肉のついた体は逞しくて、男としての色気全開。
いつも怒ったような顔をしていて、眉間に皺が寄っているのがデフォルトの表情なところも好き。
表情が読めないってミステリアスだよね。
こんなふうに近くで先生の顔が見られるうれしさで、私は口を開く。
「先生って、確か35歳ですよね」
「ああ。今年で36だが、だからなんだ」
「先生って独身でしたよね?」
私が首を傾げて聞いてみると、「結婚はしていないが、今はそれは関係ないだろう」と不思議そうな顔をされた。
私はとびきりスマイルでこう聞いてみる。
「16歳の女子は興味ないですか?」
「生徒として興味はある」
「女性としては?」
私がそう聞くと先生は、鼻で笑って一言。
「女性、ねえ……」
「あと4年ぐらいしたらびっくりするほどきれいになりますよ」
「それで、だ。知立。お前をここに呼び出したのには理由があってだな」
「スルーですか? まあ、確かに私、4年後にきれいになってそうもないですが!」
泣きそうな勢いで先生に訴えてみる。
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