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この部活に先輩がどうしても入部してくれ、と言うのなら、入ることを前向きに考えてもいいかな。
そう考えたところでふと聞いてみた。
「ここってどのくらい部員がいるんですか?」
「ん? 今のところ僕だけだよ」
予想以上にヤバめの部活だった。
やっぱり部屋の中まで入るのは良くなかったかも。
もう部員だとか言われてもおかしくないし。
もしかしたら、こうして私の警戒心をなくして入部させる魂胆かもしれない。
そんなことを考えていると、高原先輩が立ち上がる。
「さて、今日は解散」
「えっ?」
「実は僕、今日はちょっと大事な用事があってね」
「そうなんですか」
「うん。一応、見学者とか入部希望者とかいないかなあと思ってここに来てみたら君がいたってわけ」
先輩はスクールバッグを肩にかけ、椅子をしまう。
私も慌てて立ち上がり、先輩の後に続く。
音楽準備室Ⅱの教室を出ると、先輩はやさしい笑顔を浮かべたままこう言う。
「じゃあ、今日はありがとう」
「いいえ、私は特に何もしていませんし……」
「そんなことないよ」
去り際、そう言った先輩がニヤリと笑ったのは、気のせいだろうか。
ついでに、なんとなくあの人にはどこかで会ったことがあるような気もする。
これも気のせいかな。
小さくなっていく背中を眺めながら、首を傾げる。
まあ、なんでもいいや!
早く帰ろ帰ろ。
思いのほか、早く終わったし勧誘もされなかったし。
明日からここに来なければいい話だ。
もう高原先輩とも『ミルク部』とも関わることはないだろう。
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