帰るまで、あと・・・

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この時間が一番恭介さんのスマホは鳴っていて、真夜中過ぎまで鳴り止まない 恭介さんもそれから私もいつも何も言わないけれど、誰からなのかだいたい分かっている 「……出ないんですか?」 私はそうすることが普通のように、訊いた 「うん、いいんだ」 恭介さんはいつものように普通に言ってから、そのまま私の中に入ってきた 「はああん……っ」 身体を重ね合わせると、ゆっくりと前後に動き出す 「んっ、んっ、あっ、ああっ、あん」 心地よい摩擦を感じて、衝動的に喘ぎ声が出てしまう 声を出すことにわずかな羞恥を感じるけれど、躊躇いはなかった 私の喘ぎ声と恭介さんの弾んだ吐息と、身体と身体がぶつかる乾いた音と結合部からの濡れた音と、畳の軋む音の合間を縫うようにスマホが鳴っている 恭介さんはその音を無視して、まるで忘れるかのように腰を動かしている 「あっ、あっ、あんっ、あんっ、んっ、んんっ」 まだわずかに残っている理性で、考える 恭介さんには真夜中に電話をかけてくる婚約者がいて、私とこうしている事は浮気になる 私は、浮気相手になる いけないと分かっているけれど、与えられる快感に道徳心は負けてしまう 私はもっと深く恭介さんを追い求めて、腕を首に回して脚を腰に回してぎゅっと全身の力を使って抱き締める
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