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恭介さんは優しい声音で、ゆっくりと穏やかにそう言ってくれる
「……分かりました」
私は出しかけていた財布をしまい、申し訳ない気分になりながらも、ドアを開けて降りた
「藍璃ちゃん、昨夜は君と過ごせて本当に良かった。……じゃあ、元気でね」
恭介さんは眉根を寄せて、少し苦しげに微笑みながら別れの挨拶をする
……あ、そうだ
もうこれで、恭介さんとさよならなんだ
「……はい。恭介さん…こそ、お元気で」
私は苦しいほど切なく痛む胸を押さえながら、震える声で言った
ドアを閉める
窓越しに見える恭介さんは何故か切なそうな表情をしていて、目が離せない
しばらくしてタクシーがゆっくりと発進して、段々と離れていくのをその場に佇みながら見送る
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