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部屋の中は沈黙が流れていた
冬の強風の隙間風が窓から入り、ヒューという汽笛が時々聞こえてくるだけ
顔を伏せて、熱いお茶を飲む恭介さんの仕草を盗み見る
「藍璃ちゃん、どうして俺を部屋に入れたの?」
恭介さんは、不意に私に訊いた
不意で突然すぎて、どう答えればいいか分からない
ただ、気付いたら恭介さんを室内に入れていて、お茶を出しているだけ
何も答えずにただ頬を赤らめて俯いていると、恭介さんはおもむろにテーブルの上に左手を乗せた
目だけを上に向けて、前髪越しに恭介さんの左手を見ると薬指に細いシンプルなデザインの銀色の指輪をしている
私の心に、鋭いナイフが次から次へと突き刺さっていた
……ああ、やっぱり恭介さんは、結婚していたんだ
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