君の所へ

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 街はクリスマスムードに溢れていた。何処も彼処も賑やかで和やかな雰囲気で満たされている。僕はそれに耐えられなくて、人のいない方へ足を向ける。  人の多い場所は思い出したくない記憶であっても思い出してしまう。それは楽しかったはずのものであっても今の僕には辛いものへと変わっていた。 「どうして、君はいなくなってしまったんだ……」  ずっと近くにいてくれた幼馴染。明るくて優しい彼女はいつも僕を気にかけてくれていた。この街の至る所で彼女との思い出が蘇る。それがとても辛かった。  振り払うように、逃げるように、僕は街から離れていく。段々と喧騒が遠くなり人も少なくなり……気づけば誰も居ない道路へと辿り着いていた。 「ここは……?」  辺りを見回しても何も無い。強いて言うなら赤茶けたバス停が一つあるが、それだけだ。 「こんな所あったか……?」  そう長い時間歩いていた訳では無い。だから街からはそう離れていないはずだ。それなのに全く見覚えのない場所に行き着くことなんてあるだろうか。 「まぁ……ここが何処でもいいか……」  一瞬、焦りが頭を過ぎったものの直ぐにどうでも良くなった。元より、行く当てなど決めていなかったからだ。ただ彼女を思い出すもの全てから逃げ出したかった。
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