君の所へ

3/4
前へ
/4ページ
次へ
  道の端に座り込んでぼんやりと空を眺める。清々しいくらいに澄んだ青色に浮かぶ白は一つもない。 「会いたいな……」  思い出したくないのに、考えるのは彼女のことばかりだった。首に巻いたマフラーにそっと触れる。これも彼女がくれた物だ。  思い出したくない。けれど忘れたくもない。捨ててしまいたいのに、いつまでも手放すことが出来ない。  目の奥が熱くなる。じわりと目の縁が濡れる。こんな僕を見たらきっと彼女は笑うだろう。その笑顔を隣で見れたらどれほど良かっただろうか。  彼女を亡くして想う。永遠と彼女を強請っている。人混みで空目して、夢の中で探す。未だに忘れることが出来ない。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加