ぼくのあまい1日。

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 「運転宜しくお願いします」  理事長との話し合いも無事に終わり、今はいよいよ転校生を迎えに校舎から外へ出て校門へ向かう車の中。  副委員長は気になっていたことを徐ろにきりだした。  「僕、理事長ってもっと例の転校生の方を気にかけると思ってたけど、、。やっぱり身内の方が気になっちゃうんだねー」  「そう…ですね」  今日の生徒会朝の会議で昨夜会長とは散々話あったのものの、生徒会メンバーでもう一度話し合う予定だった理事長の甥っ子について。  会長のハッキング結果は黒。  __つまり、裏口入学だということ。   理事長が何故甥っ子の裏口入学を認めたのかはまだ謎だが、5月という微妙な時期に転校させたり、元の高校で問題を起こしたわけじゃないのに学園に招いてる。  このことから、ただ単に頭が悪く試験をパス出来ないから裏口入学させた、というのは単純過ぎる気がする。  " 𓂃 を頼んだよ "  理事長に呼ばれたその名前は例の転校生のものではなく理事長の甥っ子の名前。  あの理事長が自分の甥っ子だからといって特別扱いするようにはとても思えない。  それでも、今後学園を大きく動かすことになるだろう例の一般人転校生を随分と " 何の害のないもの " として扱いすぎでは無いだろうか。  「…輩……フウマ先輩!」  「へ、、ぁ、着きました?」  「着いたけど、どうしたのー?ぼーっとして。何か気になることでもあった?」  眉を下げ、心配で堪らないという表情をする副委員長に、副会長は安心させるようにいつも通り、笑顔で返事をした。  「いえ、大丈夫ですよ」  だが、副委員長は頬を膨らませ、少し怒ったような表情をした。そんな副委員長に副会長は首を傾げる。  「どうしました?」  「…僕の前では笑うの禁止ね」  「……はい?」  副会長は意味がわからない、という顔で目をぱちくりとさせる。  そんな副会長に副委員長は頬を膨らます。  「その、、目が笑ってない、笑い方の」  「_ッ!! 分かってらしたんですね…」  この学園で、副会長の違和感のある笑い方に気づいている人は少ない。  生徒会の役員は勿論、他にはハイスペック風紀委員長、そして副会長のファンクラブの様な存在の親衛隊である。  「うん…。それがフウマ先輩の仮面だって分かっているけど、でも、僕は、、」  「わかりました。そうですよね、作られた笑みを向けられて喜ぶ方などいません。…それでも、この学園では仕方が無いのです。分かって下さると嬉しいのですが」  「うん。それをやめろとは僕も言わない。でも、僕の前では本物の笑顔を見せてよーフウマ先輩の本物の笑顔、大好きだからさ」  ぱあっと輝く副委員長の微笑み。  いつものにやっとした笑い方でも、可愛らしいニコッとした笑い方でもなくて、  __凄く、綺麗だ。  それと同時に感じるもの。  顔が、熱い。  「……はいっ」
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