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ーーーーーーーーーー No side
バ会長を亡き者にした後、副会長は長い長い廊下を歩いていた。
しんと静まり返った廊下を独りで歩いていると思い浮かぶのはいつかの悲しい出来事でも、自分の思い出したくないトラウマでも無い。
思い浮かぶのは、ムカつくけど頼りになる会長と騒がしいけど可愛い後輩達。
言葉が苦手な書記のハルキは、初めて自分を受け入れてくれた生徒会の役員のことと、生徒会の環境をとても気に入っているけれど、それは彼だけじゃなく、全員がそう思っていることである。
普段、生徒達に騒がれる程人気のある生徒会だが、彼らも人間なので全員が欠点を持っている。そんな欠点を認め合い、軽蔑せず受け入れる。
暖かくて、かけがけのない場所。それが壊れることは絶対ない。
「あ、おはようございます」
副会長は長い廊下の途中で、黒髪を風がないのにたなびかせながら異様なオーラを放つ、顔の整った男と会った。
「副会長か。リュウガ以外の生徒会役員と会うのはなんだか久しいな」
……風紀委員と関わる仕事は全てバ会長がやらせてくれないんですよ。
会長への意地悪でそう言っても良かったが、頭の良い副会長は、仕事を増やされたくないので口を慎んだ。
彼は、橘 秀斗(たちばな しゅうと)
長くて綺麗な黒髪を持ち、男にしては少し頼りないとも言える薄い体。それでもこの男の回し蹴りはよくきく。
「私達は教室でも会っているでしょう?」
「あ、そうか」
普段は他の委員に回らないほど仕事をこなし、この学園の最大の問題も彼が委員長の代が1番少ないというハイスペックさ持っているのに、彼は何処か、天然だ。
「今から例の生徒を迎えに行くんですけどそちらの準備は大丈夫でしょうか?」
「ああ。そういえば例の生徒は風紀から片倉を借す。今呼んでくるから2人で行け」
片倉…かたくら… 聞いたことあるようなないような名前を聞いて思考を巡らす。
「あ、風紀副委員長ですね」
「ちょっとー名前覚えて下さいよー」
副会長の後ろからひょこっと顔を出し、愛想良く微笑む小柄な男。
片倉 咲也。 (かたくら さくや)
ピンクブラウンでふわふわとした髪を歩く度にぴょこぴょこさせ、可愛らしい印象だが、口が悪く腹黒な副会長と同じくらい、性格が悪い。というより、猫かぶりだ。
「お久しぶりですね、副委員長」
「名前で呼んでよー」
「名前…ちょっと分かんないです」
「片倉咲也ですー!てか僕2年だしそろそろ名前くらい覚えててもおかしくないよー?」
きゃんきゃんと朝から騒ぐ副委員長に副会長は少し溜息をつく。天然な委員長に愛想はいいけど猫かぶりな副委員長。
自分の組織もキャラが濃いと思っていたけど、こっちも大概だ。
「で、私はこの方と理事長室まで行きもう一度書類等を確認してから校門まで行けば良いのですね。……この方と車で2人っきりなんて」
「副会長サン最後の一言いらないよー」
プクっと口を含ませ可愛らしい反応をするが内心割と怒ってたりする。
なんせ副委員長が風紀に入った理由は…
_副会長に憧れたからなのである。
(ちぇっ、嬉しいのは俺だけか……)
副会長に憧れているくせして、風紀に入った理由は仕事をサボる生徒会長の下で働きたくなかった故、生徒会と風紀は関わることも多かったからだ。
ただ1つ誤算があったとしたら会長が委員長に惚れていたことにより、副会長が風紀室に足を運ぶことがほぼない事だ。
「そういえば、委員長はどちらに?」
「あ、そうだよ。シュウトさん、今から何処かに行く予定だったの?」
しばしの沈黙後。
やはりこの男は裏切らない。
「……わすれた」
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