プロローグ

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鍵当番の週は、毎朝憂鬱で仕方ない。 そうじゃない週なら、毎朝8時30分に出勤すれば良いんだけど、鍵当番の週は遅くても8時までには出勤しなきゃいけない。 たかが30分。 されど30分。 朝の30分早起きは、大変な苦痛だ。 特に私のような一人暮らししてる女子にとっては拷問と言っても過言ではない。 早朝出勤に時間外手当がつくと言えども、だ。 いつもの週より早めに起きて、顔洗って朝ごはん食べて、髪をセットしてメイクして、着替えて…。 毎朝、時計がわりに点けっぱなしにしてるテレビの情報番組も、30分違えばやってるコーナーも違うし、何しろ、早出の日は『今日の占い』も見れない。 ま、別に占いに縛られてる訳じゃないし、楽しみにしてる訳でもないんだけど。 ただ占いには変なこだわりがあって、コーナーの最後に発表される一位と十二位だけは、絶対見ない。 そこまでに自分の蟹座が出てくれば、“ふーん”って思って見てるけど、一位にしても最下位にしても、その結果に自分の行動が囚われるのがイヤなので、見ないことにしている。 もちろん、昔は全部見てた。 もし蟹座が最下位なら『今日のラッキーアイテム』と言われたモノをわざわざ探して身につけたり、要注意と言われたスポットには行かないようにしたり…。 反対に一位だった場合も、“今日の自分は絶好調”だと変な自己暗示にかかって、無謀なことして失敗したり。 世の中には、知らない方がいいことなんてたくさんあるんだと、身をもって学んだ。
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