プロローグ

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「おはよう」 掃除のおばちゃんの様子を伺いながら、ぼんやりと新聞を眺めていると、ちらほらと職員が集まり始めた。 そして、その職員の集まる各シマを順々に回って声をかけながら、横川支店長が出勤してきた。 「おはようございます。支店長、朝からご機嫌ですね」 近くに来た横川支店長と挨拶を交わす。 支店長は45歳。 支店長になったのはこの支店が初めて。 妻帯者で高校生の女の子と、中学生の男の子の父親でもある。 市内中心部の分譲マンションの七階に住んでて、毎朝電車で20分かけて通勤してくる。 コーヒーとお酒が好きだけど、タバコは吸わない。 野球はカープファン。 なんで支店長のプロフィールに私がこんなに詳しいかというと… …なんて、やましい事は一つもなくて。 私と支店長が同じ支店に勤務するのは、この支店で実に3回目。 一度目は私が新入行員だった支店、転勤して三つ目の支店、そして今現在の樺山支店。 3回も同じ店に勤務してりゃ、それなりに横川さんの素性も分かってくるもの。 私が新入行員の時には、横川支店長は、(その当時はまだ横川係長だったけど)私ら若手行員主催のクリスマスパーティーに、上の女の子を連れて遊びに来てたりして、その女の子の面倒を見たりしたことをきっかけにして、親しくなり、それからもなんだかんだで一緒に行動することも多かった。 支店長と私は、昔から仲が良かったのだ。 支店長と部下の関係になるまでは、“九条ちゃん”、“横ちゃん”の仲だったし。 今はさすがに他の行員の前ではそんな呼び方は、私は、出来ないけど。 あ、酔っぱらった時は“横ちゃん”って呼んでたかもしれないけど。
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