#11

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「「誠に、申し訳ありませんでした」」 「わ…っ、頭を上げてください…っ」 本当に土下座しそうな勢いの二人に、しずくは助けを求めて宗一郎を見上げた。 「雨宮君が困っているだろう。二人とももう良いよ」 「「來川先生〜っ」」 二人が何とか立ち直ってくれたようでしずくは安心してキッチンへ向かった。 幸い今日は日曜日で、二人とも会社は休みのようだ。 リビングにはトーストの焼けるいい匂いがしていて、しずくは深く息を吸った。 ついでだからと四人分朝食を用意したが、食べてもらえるだろうか。 「あの、朝ごはんもうすぐ出来ますので、良かったら…!」 「何から何まで、本当にすみません…」 「先生、私も手伝います!」 まだ落ち込んでいる神崎を置いて、川口がキッチンへとやって来た。 「先生、昨日もしかして、來川先生の部屋で寝たんですか?」 こっそりと尋ねられ、しずくは赤くなって川口を見た。 「う…っ、えっと…っ」 「…私と神崎は意外と役立ったのかもしれないですね」 しずくの様子を見て訳知り顔で頷いた川口は、出来上がった朝食を運んでいった。 「もう…」 赤いまましずくも残りの皿を運んでいく。 すると神崎と話していた宗一郎と目が合い、更に鼓動が早くなる。 「あ、朝ごはん出来ましたよ」 「あぁ、今行く」 「ありがとうございます…っ」 心無しか泣きそうな神崎の後から宗一郎がやってくる。 席につこうとしたところで軽く髪を撫でられ、しずくは目を瞠る。 「寝癖だ」 「ぁ…っ、すみません、ありがとうございます…!」 自分で髪を撫で付け、慌てて席についた。 その様子を見ていた川口が、やれやれといった感じで神崎を小突いた。 「早くご馳走になってお暇するわよ!」 「え?あ、あぁ…」 川口がよく分かっていない神崎を急かしつつ、賑やかな朝の時間が過ぎていった──。
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