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「先生、次のお仕事なんですが」 川口が強引に追加した肉料理と格闘していたところに話を切り出され、しずくは顔を上げた。 「次…ですか…?」 「はい!“星彩をさがして”が始まってから、先生へのお仕事の相談が続々と来てまして」 「…」 「今作が終わるまでに、来ている案件の一覧をお見せしますね」 「…はい…、お願いします」 ──終わる…? ──そうだ。 そもそも宗一郎と暮らし始めたのもこの仕事が終わるまでの約束だったというのに、あまりにも一緒にいるのが自然になって終わりがある事を忘れてしまうところだった。 「なかなか面白い企画もあったりするんですよ!きっと先生にも興味を持って頂けると思います」 川口が何やら話しているがしずくにはもう届いてていなかった。 ──宗一郎との生活が終わる。優しい時間も温かい腕も、全て失くなってしまう。 「…んせい、先生!」 「…っ、はい」 呼ばれる声に反射で答えて顔を上げると、心配そうな川口と目が合った。 「ひどい顔色ですよ…?気分が悪いですか?」 「…っ、大丈夫…です。…ちょっと食べすぎたのかもしれません」 震える指先を隠すように握って、何とか川口に微笑んだ。 「そうですか…?」 「…はい」 「先生が、そう言うなら…」 「…川口さん、デザート食べないんですか?」 「…そうですね!先生もコーヒー飲みますよね?」 まだ心配そうな川口に微笑むと、彼女は気を取り直したように追加の注文をした。 川口さんに心配かけて、何やってんだろ… しずくは務めて明るく振る舞いつつ、川口がデザートを食べ終わったところで会計して店を出た。 「先生、今日はありがとうございました」 「いえ、こちらこそ。川口さん気をつけて帰って下さいね」 「…先生も、気をつけて帰って下さいね」 電車で帰るという川口を駅の改札まで送り届け、別れた。 彼女は少し心配そうにしずくを振り返りながら、人混みに消えていった。
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