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呼吸が落ち着くまで背中を撫でていた宗一郎は、しばらくして泣き続けるしずくを抱き上げた。
ベッドに下ろされてジャケットを脱がされる。
しずくはされるがままで、宗一郎に身を任せていた。
「少し眠った方が良い」
「…でも」
宗一郎を見上げると、優しい瞳がしずくを見つめていた。
──ずっと見たかった、宗一郎さんの瞳だ。
瞬きすると、一粒雫が落ちる。
彼は優しく目尻を拭い、しずくを抱きしめて一緒にベッドに入った。
しずくのベッドは小さくて、宗一郎と入るとかなり窮屈だった。
それでもしずくは離れたくなくて、宗一郎の胸元に顔を埋める。
「…シーツも汚れてしまいました」
「そうだな」
「…床も、綺麗にしないと」
「起きたら一緒に拭こう」
ぽつぽつと話すしずくの言葉に、宗一郎は優しく応えてくれる。
話しているうちに、昂っていた気持ちがだんだんと落ち着いてきた。
優しく髪を梳かれ、しずくは顔を上げた。
「…宗一郎さん、…おかえりなさい」
「…ただいま、しずく」
本当は宗一郎のマンションで、笑って伝えたかった言葉を告げる。
それを聞いて優しく微笑んだ宗一郎がしずくの額に口付けた。
「帰ったら、お土産を食べよう」
「はい…」
「おやすみ、しずく」
「おやすみなさい…」
温かい宗一郎の腕の中で、しずくはようやく安心して眠りについた。
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