#13

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すぐ隣で微かに動いた空気に、しずくの意識が浮上した。 傍にある陽だまりのような温かさに微笑んで擦り寄る。 「…くすぐったい」 少し笑って優しく髪を撫でられた所で、はっとしてしずくは目を開けた。 「…っ!宗一郎さん…!」 「おはよう、しずく」 「…おはようございます…」 抱きしめられている体勢に鼓動が早くなる。 このままでは密着した宗一郎に鼓動が伝わってしまいそうで、しずくは赤くなって自分の胸元を握った。 「大分顔色が良くなったな」 「…っ、迷惑かけて、すみません…」 「迷惑じゃない。…心配したんだ」 温かい手で頬を包まれ、しずくは無意識にその手に擦り寄った。 少し驚いた宗一郎がそのまま目尻に口付けて、優しく微笑む。 ──宗一郎さんを好きになってしまった。 その気持ちに気付いてしまったしずくにとって、この触れ合いは別の意味を持ってしまう。 宗一郎は相変わらず優しく触れてくれるけれど、しずくのことをどう思っているのだろうか──。 「起きられそうか?」 「はい…!」 考えていたところに声がかかり、しずくは慌てて身を起こした。 続いて起き上がった宗一郎の向こうに黒い絵を見つけて、しずくは目を伏せる。 きっと昨晩しずくはパニックになって“逃げた”んだろう。 画材はこの部屋の取りやすいところにまとめて置いていたが、宗一郎の所に持って行かなかった紙類のストックやキャンパスは廊下の収納にしまってあった。 きっと紙が傍になくて、咄嗟に床に描いたに違いない。 「…とりあえず床を拭きます」 「手伝おう」 宗一郎に続いてベッドから降りたところでしずくは腕を捲る。 画材が床についた時のために常備している洗剤を取り出し、黒い絵の傍へ向かった。
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