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「初めて寄ったが、結構落ち着くな」 「はい」 ここに着いた時は余裕が無くて気づかなかったが、カフェを囲むように木々が茂っていて木漏れ日が落ちている。 キラキラと春の風に揺れる木漏れ日が眩しくて、しずくは目を細めた。 「…とっても綺麗です」 しずくは描きたい、とは言わない事にした。 言わなくても宗一郎にはきっと痛い程伝わっている。 こうして出掛けるきっかけをくれたのも、きっとしずくの描けない苦しみを宗一郎が理解してくれていたからだ。 「あと三十分くらい走れば、水族館に着く」 「…はい、頑張ります」 ──ここに来るまでほぼ三十分。あと半分。 しずくは気合いを入れるように残りのココアを飲み干し、宗一郎に頷いた。 再び車に乗り込み、出発する。 今度は発作が起きそうになることも無く、落ち着いてシートに身を委ねた。 「少しは慣れたか?」 「…みたいです…」 宗一郎と会話する余裕も出てきて、しずくはほっと息をつく。 本当は外を眺めたいところだが、まだそこまでは難しそうだ。 「少しは楽しめるようになると良いな」 「…楽しむ…」 「折角のドライブデートだろう?」 「デート…っ!?」 予想もしなかった単語に、思わず赤くなってしまう。 笑っている宗一郎の真意は分からないが、しずくは恐怖からではなく今度は赤い頬を隠すために俯くしか無かった。
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