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宗一郎に手を引かれるままスタッフ用の出入口を隠すように設けられた衝立に入った瞬間、強く抱き締められてしずくは目を瞠る。
「…っ、ぁ…」
宗一郎の香りに包まれ、しずくは大声を上げて泣きたくなった。
震える指で宗一郎のシャツを握りしめ、息を詰める。
「…ごめんなさい…っ」
「しずく…」
泣き続けていると宗一郎の手に頬を包まれ、顔を上げた。
次々と零れる涙を宗一郎が優しく拭っていく。
「…すまない。私が悪かった…」
「…っ、ふ…っ」
哀しい瞳の宗一郎に、しずくは必死で首を振った。
そんな顔をさせたいわけじゃない。
いつでも笑っていて欲しいのに──。
「しずく」
「…っ」
優しく目元に口付けられ、しずくは宗一郎と目を合わせた。
衝立の向こうから漏れる青い光に照らされた宗一郎は、まっすぐしずくを見つめている。
──綺麗…
しずくの好きな人は、こんなにも美しい。
青く染った視界で、不意に宗一郎が眉を寄せた。
「宗一郎さ…、ん」
不思議に思って尋ねようとしたその時、宗一郎の唇がしずくの唇を──塞いだ。
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