#15

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月明かりに染まった雲が、ゆっくりと流れていく。 しずくは窓辺のラグに座りながら今日の事を思い出していた。 あの後、二人は落ち着いたところで水族館を出て帰路についた。 宗一郎は何かまだ考え込んでいる様子で口数が少なく、隣を歩くしずくも色々な事が一度に起こったせいでぼんやりとしていた。 帰りの車内は恐怖を上回る動揺のおかげか何とか乗り切って、マンションへとたどり着いたのだった。 …キス、された──。 無意識に唇に触れていた指に、しずくは思わず赤くなる。 宗一郎は何故しずくに口付けたんだろう。 ──彼もしずくと同じ気持ちなのだろうか。 先程から同じことをぐるぐると考えている。 一人では答えの出ない問題に、しずくは触れていた手をぎゅっと握った。 右手首には真新しい包帯が巻かれている。 マンションに帰ってきてすぐ宗一郎が巻き直してくれた包帯だ。 幸い悪化はしていなかった様で、今は掴まれた痛みも消えかけている。 手首に食い込む容赦の無い指の感触を思い出して、しずくは身震いした。 不快感が蘇り思わず顔を上げて宗一郎を見る。 そろそろ寝る時間だが動く気配が無い彼は、ソファーでまだ何やら考えている様子でしずくは俯いた。 ──宗一郎さん、どうしたのかな… 帰ってきてからも普段と少し様子の違う宗一郎に、まだキスの理由を聞くことも出来ないでいる。 「…」 「…しずく?」 意を決して立ち上がり、宗一郎の前に立った。 気配に気付いた宗一郎がしずくを見上げる。 その瞳にはまだ哀しみの灯が燻っていて、しずくはそれを消すように宗一郎を抱きしめた。 「どうした…?」 宗一郎が首に腕を回したしずくを抱きしめ返したため、膝に座るような体勢になってしまい少し赤くなる。 「…っ、い、一緒に寝てくれないんですか…?」 なんとか聞いたしずくは、堪えきれず赤くなった顔を伏せた。
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