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『──ずく、しずく』 誰かが呼んでいる。 柔らかい声が大好きだった筈なのに、今は誰のものだったのか思い出せない。 『ほら、もう泣かないで…』 優しく撫でる手が大好きだった。 『明日も、宗一郎君と遊ぶんでしょう…?』 手を伸ばせばいつでも抱き締めてくれる腕が大好きだった。 『──大丈夫よ、しずく…』 温かい──温かかったのに──… 「…ずく、しずく!」
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