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 今日も地獄だった。毎日のように怒鳴られ、暴力を振るわれる。少しでも言われたことができていなかったりするとすごく怒られる。 「なんでそんなこともできていないの!!お前をここまで育ててやったのにその恩返しもできないのか!!」 「ごめんなさい」 母は、いつも私にその言葉を言う。出来のいい可愛らしい妹と、不出来の突出した何かもない平凡な私、ニーナ。いつから名前さえも呼ばれなくなったのだろうか。一つ下の妹は誰が見ても可愛らしく、学校の成績もいいできた妹で、両親はそんな妹を可愛がっている。逆に私は何をやってもどんくさくて学校の成績も妹ほどできなかったから悪かった。父も母も私を恥さらしだといつも罵る。 「謝り方はこの間言ったばかりだろう!?なんで覚えていないんだい!?」 「申し訳ありませんでした」 「なんだい、その目は」 「申し訳ありません」 怖い、恐い。母はいつも私に怒る人だ。酷いときは叩かれることもあるから機嫌を損ねる前になんとかしなくてはならない。父は傍観者だ。だけど時折、私に酷いことをするから父も怖い。妹は、私を表向き庇ってくれているけれど、私のことを見下しているのは知っている。味方なんて、どこにもいない。  オンボロになった同じワンピースに煤だらけの靴や手、顔。伸びっぱなしの髪の毛だって一つにくくるしかない。お風呂は水だけしか使えないし、普通に入ると怒られるからこっそりと誰もいないときに身体を拭う程度だ。お料理、お洗濯なんかの家事はすべて私が担う。まるで、童話のシンデレラのようだと我ながら思った。私はシンデレラという作品が好きだった。いじめられるシンデレラが王子様と幸せになる、素敵な夢物語。現実はそう甘くないことは知っていても憧れる作品だ。私も幸せになれたらな、なんて思うことはたまにあるけれど、そこから逃れられるような術がないのも現実。 「お母さん、お手紙来てたー。お姉ちゃんにもあるよ」 「え、王宮主催の舞踏会!?あなた、新しいドレスを仕立てなくちゃ。まぁ、みすぼらしいネズミにもきているようだけれど、必要ないわね」 「そうだな、母さん」  私の家は中流家庭、貴族ではないけれどそれなりに暮らしはできる。新しいドレスを仕立てることもできるくらいのお金はある。私にあてられた手紙なのに、読ませてさえももらえず目の前で暖炉にくべられ、燃えていくのをただ見つめることしかできなかった。 「お前のような出来損ないの行く場所ではないのよ、わかった?」 私もシンデレラのような魔法があれば、行けたのかな…?なんて思うけれど、現実に魔法は存在していない。自動車も街灯もあるこの社会で魔法なんてあったならどれほどよかったことか。 「返事は!?」 「はい」 「はぁ、言われないと返事もできないだなんて。お前のような出来損ないを産んだのは人生の汚点だわ」 「申し訳ありません」 謝ることしかできない私は、なんて弱いのだろうか。私にはシンデレラのように頑張れない、生きていくのに必死だから従順に過ごしているだけ。ここを出ていったって行く場所なんてないから。  叩かれた頬や棒で打たれた身体をさすりながら与えられた屋根裏部屋に向かう。大量に渡される衣装のお直しは母が仕事と称して与えてくるものだ。最初は下手くそで折檻を受けたこともあったけど、最近では上手になった。それを今日も終わるまで寝られない。願えるのなら、どうか私にも幸せな世界を見せてください、神様。
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