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それにしても、この人のことを知らない私はどうしたらいいのだろうか。
他人であるはずが、急激に関係のある人になったからだ。
この人が何者なのか、どうして私を拐ったのか。
気が気じゃない。でも私が今悩み続けたところで何も変わりはしない。
......こうなったら直接対決しかない。
私はその人に聞くことにした。
その人は立ち上がり、キッチンで飲み物を準備していた。
「あの・・・・・・どうして私を誘拐したんですか?」
意を決して聞いた。
怖くて何を考えているのかわからなくて不安だった。
どうして私なんだろう......。
他にも私みたいな人はいるし、私の体や顔は普通だし、これといって人より優れているものはない。
むしろ人より欠けているものばかりだ。
私には手を上げないと言っていたから、玩具にするつもりはないのか......?
「うーん・・・・・・。そうだねえ、何でだろうねえ。」
その裕璃崎と名乗る人は上を見上げて考えてから、また準備を再開してあやふやな答えを下した。
......本当にこの人は何なんだ!?私を誘拐した意味がないのか?
いやいや、騙されるな、私。こういう奴ほど面倒くさいものだ。
こいつのことを知りたい訳ではない、ただ安全かどうかだ。
「でも、根拠はありますよね?もしかして・・・・・・っそういう趣味が・・・?」
「いや違うから!幼女趣味があるわけでもたらしでもないから。」
案外本気でツッコんできた。
まあ、変人ではなかったということはわかったが......何も変わっていない。
その人は私の前にシンプルな緑色のマグカップを渡した。
その中にはコーヒーが入っていた。
私は初めて飲む物に戸惑ってから口つけた。
コクコク......。
「うっ、・・・・・・苦い。」
「あははっ、お子様にはまだ早かったかな。」
私が顔をしかめてると、この人は笑って私と同じブラックコーヒーを飲む。
よくそんな苦いものを飲めるな......、とドン引きして見ているとその人と目が合いその人は「あっ、ミルクと砂糖持ってくるね。」と、言い丁寧にキッチンから取り出し、私の目の前の机に置いた。
それを奪い取るように自分のブラックコーヒーに注いだ。
念のためミルクを二個と砂糖を四つ注ぐ。
「・・・・・・ありがとうございます。でも、私はお子様じゃないです。十八歳です。」
「十八歳ならまだお子様だよ。そう言う僕もまだ二十歳だけどね。」
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