∬神出鬼没∬

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その人は私の斜め右の一人用ソファに座ってくつろいでいる。 やっぱりこの人が私にとって害があるかどうかもわからない。 「・・・・・・それなら私と変わらないじゃないですか。」 「そんなこともないんだよ。二歳差でも君は未成年、僕は社会人なんだから。僕が君に手を出したら捕まっちゃうんだよ?」 その人はブラックコーヒーに口つけて飲みながら悠長にそんなことを言っている。 既に誘拐をしている時点で捕まるだろうに。 それに成人が未成年に手を出しても通報さえしなければ......いや、違うかな。誰にも知られなければ罪には問われない。 大人はそうやって生きているじゃないか。 今まで私に散々してきたように......。 「・・・・・・いえ、違いますよね?だって大人は自分の過ちを隠して今も笑っているじゃないですか。」 「っ・・・・・・。」 私は自分のされてきたことをとても憎んでいる。言葉では言い表せないことも感情も。 きっと私が汚れてしまっているからだ。 今の私は歪んだ笑みを浮かべている。 その人はマグカップを机に置いた。 それまで変わらず笑顔だった顔は一瞬曇った。 私もマグカップを置いてその人に歩み寄った。 自分でするのは不快だが仕方がないと割り切るしかない。 斜めの人の前に立ちはだかり、自分の重身を前に置いてその人の上に跨がる。 ギシリと卑猥な音がしてその人の首に自分の腕を絡めた。 私は不適に笑いながら見下ろし、顔を至近距離で止めた。 その人は真顔のまま私を見ている。 さっきまで笑っていた顔は消え失せてしまったようだ。 「未成年なんて建前でしょう?そういう穢れていない奴を汚すのが大好物で、支配する為だけを生き甲斐にする。貴方だってそうでしょう?・・・・・・バレなきゃ何をしても構わないんですよ。」 「・・・・・・。」 その人は何も言わなくなった。無言のままじっと私を見るだけ。 私が上から見下ろして笑っていても変わらない。 私は更に探りを入れる。 「ねえ、そろそろ本当のこと言いません?どうして私を誘拐したんですか?」
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