∬神出鬼没∬

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心を無にしてでも見つけなければならない。 誰だって根拠の一つくらいはある。 この人が何を思ってしたのか、それが気にくわないだけ。 「君は僕のことが知りたいの?」 「っ!・・・・・・もちろんです。」 目の前の人はさらりと私の足を撫で太ももを触る。 私は驚きはしたものの触られる程度なら問題ない。 真顔でじりじりと距離を詰める。 ......生地越しならば。 「でも、僕こそ君を知らないんだけどね。」 「戯言は聞いてません。話してください。」 冷たく言い放ち私は見下した。 この人は私の太ももを撫でていた手を上に伸ばし笑った。 何かと慎重に眺めているとするりと触れた。 この人は私の首に触れてくいっと引っ張った。 「なら脱いでよ。君の肌を見たいから。」 「っ!?」 私はばっと身を起こして立ち上がり素早く後退りし、できるだけ距離をおいた。 私は青冷めて挙動不審になり、その人を睨んだ。 驚きや戸惑い、焦りを含んだ瞳に汗が滲む。 体が目当てなら胸を触ればいいのに、どうして首? しかも脱ぐって......まさか、バレている? 疑心暗鬼になって私は余裕がないのに関わらず、この人はくすくすと笑う。 妙に不思議で気味が悪い。 「その反応をするってことは認めるってことだよ?」 「な、・・・何をですか?」 精一杯に虚勢を張ってなめられないように見くびらないように......と、私が混濁しているのに余裕があるようだ。 つい触れられた首を隠した。 「触れられるのはいいのに、見られるのは駄目なんだ?君さ、味方っていないでしょ?」 「・・・・・・?」 急に変なことを言うものだからびっくりした。図星だ。 味方、味方......そんなもの知らない。 学んだ覚えはない。 「やっぱりね。身内も友達も何もかも・・・・・・あらかた当たってるでしょ?」 「・・・・・・。」 本当にこの人が言っていることは正しい。 実際にそんな気はしていた。......いや、生まれた瞬間にそうだった。 「大丈夫。君から約束を破らない限り、僕は君を守るつもりだよ?だから君に危害は加えない。信じれないかもしれないけど・・・・・・信じなくてもいいから僕を頼ってほしい。」 その人はそう言って立ち上がり私を見下ろす立場で笑い、頭を撫でた。 それがあまりにも優しすぎて怖かった。 本当に?......気まぐれじゃないの? 信じなくてもいいから頼れだなんて無茶だ。 一方的に言っているだけだから、無視をしていい。 なのに、どうしてかな。 大きな手の温もりと共にその人の言葉が脳内に響き心も温かくなったのは......。
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