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その翌日の朝。いつものように座席表を見ると……
「あ、あれ?」
私の名前の隣に、田中さんの名前。途端に諸々の原因で動機と冷や汗という症状が出てしまった。
どうしよう、ガクブル……。
おどおどしながら席に着くと、田中さんもすぐにやってきた。
「お、おはようございます」
「っス」
朝礼を終え、パソコンを起動させる。周りのチームメイトたちが操作するキーボードの音だけが響くフロア。
「あれ?」
仕事を始めて間もなく。私の使っているツールが動作しない。業務上どうしても使うものだった。
「た、田中さん……。これ動かないんですけど、原因分かりますか?」
恐る恐る尋ねると、田中さんはやり掛けのものを置いてすぐに、キャスター付きの椅子を寄せてきてくれた。
マウスを動かして何度か試してみても、やっぱり動かない。私の後ろの席の同僚も様子を見にきてくれた。
「本当だ。おかしいね。僕の隣空いてるから、そっちに席移ったら?」
「あ、いいですか!?」
「いや」
同僚の申し出に沸き立つ私を一言のみで牽制し、田中さんは画面を見つめて操作を続けながら言った。
「できるはず」
その後間もなく田中さんは原因を見つけた。
「ク◯ームで開いた時はできないみたいです。エクス◯ローラーから開いたらできる」
「すごい、全然分からなかった……。ありがとうございます」
「じゃ、それでお願いします」
威圧系の低い声。無表情。目力すごい。あ、まつげ長い。
「はい」
私はパソコンに向かい、画面を睨みつけた。
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