テイク誕生

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テイク誕生

『う~ん。何だ?!』 辺りを見回すも瞼が重い 頑張って開けて見るも殆ど見えない 何故か視界が少し赤いような気がする 身体も重い 自由に動かないのだ 『これってどういうこと??』 回りの気配を探ってると 色んな音がする 人の声や人の動く音 皆が自分を見てる気がしてるのだが、よく見えない 自分の置かれてる状況がよくわからないのだ バタバタバタバタッ 「男の子だ」 「泣かないぞ」 「呼吸は??心臓は動いているのか??」 「心臓動いてます。呼吸もしています」 「何故泣かない?!」 「魔王様をお呼びしろ!!」 等と聞こえてきた 琢磨はそこで気が付く 自分は赤ん坊ではないのかと泣いた方がいいのかと そう疑問に思い 取り敢えず適当に泣いてみた すると、周りが喜び始める どうやら正解だったようだ 「泣いたぞ!!」 「良かった」 バーン その瞬間1人の人が扉を勢いよく開け飛び込んで来た そして直ぐに近くの医者に迫る 凄い剣幕で迫っていくのだ 「子供は大丈夫なのか?!」 「安心してください。呼吸も脈も正常。泣かなかったのも、今では元気に泣いております」 「大丈夫なのだな?!何か異常があって泣いてるのではないのだな?!」 「何故泣かなかったかは推測の域を出ませんが、今のところはご安心下さい」 「今すぐ検査しろ。何があってからでは遅いではないか」 「は、はっ」 凄くかっこよくて力強い声が聞こえる この人が自分の父親なのか そう疑問に思う そして気付く 母親の声が聞こえない まさか自分を産んだら亡くなったのか そう思ってしまうのだ いきなり不幸になってしまった そう思ってしまう 琢磨は恵まれた環境に産んでくれ そう頼んだ筈だった いきなりから片親とかは嫌だった そう思っていたら 優しく綺麗な声が聞こえた 「ディール様。落ち着いて下さい。赤ん坊はしっかり産声を上げ、今も動き出そうと手足を動かしているではありませんか!!」 「しかしマイン。もしかしてがあっては遅いのだぞ?!やっとできた赤ん坊だ。慎重になるのも当然ではないか?!」 「あなたは一国の王なのですよ。慎重になるのは構いませんが足踏みばかりしていては前に進みません。もっとドシッと構えてください」 「くっ…………。わかった。だが今ではなくても検査はしてもらうぞ。よいな?!」 「えぇ構いません。それで私にかける言葉はないのですか?!まだ心配や労いの言葉も御座いませんが?!」 気配だけで母親の口元が笑ってて 目が笑ってない表情と怒気を感じる そしてそれを見て父親から 明らかに怯える気配を感じる それ程までに母親の優しい声の裏側に隠された怒気は凄まじかった 「すまない。つい焦っていて!!よく立派な子を産んでくれた。疲れただろうよく休んでくれ」 「えぇ休ませてもらいます。私が必死に力んでる間側にも側におらず、外の廊下で『まだなのか?!』とか『いつ産まれるのだ!!』と怒鳴り散らす声だけが聞こえてとても腹が立ちましたし」 「違うのだ。あれはお前が心配で」 「心配なのに側には居てくださらなかったのですね?!とても立派な立ち振舞いですこと」 等と母親の冷たい口擊が聞こえる 父親はひたすらあたふたしているのがわかる 情けない 少しだけ父親を軽蔑する でも母親はとても怖い方なのだとわかってしまう 絶対に口では勝てない これからこの方に育ててもらうのだ 絶対に怒らせないようにしようと胸に誓う そして 次の瞬間とても優しい声が聞こえた 「抱かせてちょうだい」 「どうぞ」 医者に抱かれていた琢磨 母親に抱かれたのがわかる とても優しく大切なものを触るかのように、壊れないように包み込むように琢磨を抱き締める 「私の子。貴方の名前はテイク。テイク・マハルドよ。産まれてきてくれて有難う。母としてはとても未熟ですが、貴方と共に成長して行きたいわ。よろしくね」 母の優しくも力強い声が聞こえた 何故か前世の母親に似ていた いつも優しく自分を攻めてばかりだった母 琢磨にいつも謝っていた そんな母だから助けてあげたかったけど 転生してしまってはどうしようもない 後悔だけが残る 転生なんて夢だと思ってた だから適当なお願いをしたが こんなことなら転生なんてしてもらわなくてよかったと後悔する 母のもとに帰してくれと頼めば良かったと 「どうして悲しそうな顔してるの?!大丈夫よ。安心して。私がいるわ」 新しい母親の優しい言葉が テイクを更に傷付ける その言葉に涙が止まらない 恵まれた環境に産んでくれって頼んだ 本当に恵まれていた 「よしよし。いい子ね。大丈夫だから」 テイクはこの声を最後にまた意識を手放した
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