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青春カップパフェ
佐伯宝太郎はこの春から大学生になった。パッとしない塩タイプ寄りの小顔に、病的ともいえる細身が彼に頼りない印象を与える。実際その通りなのだが。
しかしそんな彼も心機一転、後半は引き籠り気味で終わってしまった高校生活の前轍を踏むまいと奮闘をした。ファッション雑誌をひたすらに読み漁り、人生初の整髪料でガチガチに髪を固め、街の露店で黒人が売っていた十字架の首飾りを買った。こうしてどこか勘違いしている大学生が爆誕したのだった。彼としては四方の果てから見られても「何事においても順風満帆な大学生」であると信じて疑わないのだ。
彼のキャンパスライフが2か月ほど過ぎてもその頓狂な思考は変化することがなかった。夏の足音も近付いてきた昼下がり、大学の中庭で冷凍食品を盛り合わせた弁当を頬張る姿はどこか寂しげである。
ところで、そんな彼の傍らには一人の少女がいた。近隣の女子高の、なぜかあちこちが破れた制服を着ているショートボブの女の子である。小さな背丈を屈ませて、彼の食事風景をどこか楽しそうな表情で眺めていた。宝太郎から鬱陶しそうな表情を向けられているにもかかわらず。
佐伯宝太郎はこの春から大学生になった。
そしてその隣には少女がいた。彼と初めて出会ったときには名を、岡本と名乗った。
彼女は幽霊である。
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