第二章 狂を介して今日がある

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チェックアウト後、三人はホテルの駐車場に向かって歩いていた。 すると、京陽がふと口を開いた。 「これからどこに行きますか? 篤崇さん、どこか行きたいところあります?」 京陽は篤崇に那須野が原の観光マップを渡した。篤崇は観光名所がどうのこうのと言うよりも、地図の正確性に注目していた。 「何でごわすか、この上から見たような地図は」 また面倒くさい説明をしなくてはいけないのか…… 拓見は軽くため息を吐いた。そして、少し投げやりそうに説明を始める。 「人は月に足を下ろしてるんです。そして、その途中の雲の上から全体を見渡せるような鷹の目を作るにまでなっているんです」 「薩摩とこっそり武器貿易やっとった英国(エゲレス)の友人が、絵も描けて彫刻も彫れて、医者までやってたナントカってイタリアの天才のメモ書きに『空を飛ぶ機械』があったとか吐かしだして、おいどん達ばそれを与太話だと笑い飛ばして酒の肴にしたんだ。英国(エゲレス)の子供向けの絵本にも鳥の羽を蜂蜜で固めて空飛ぶなんて与太話があったからなぁ、おいどん達は空飛ぶなんて絶対にありえないと思ってたばい。それが月にまで飛べるようになるなんて…… 本当に川に飲み込まれてから驚きすぎて疲れたばい」 篤崇は無気力そうに地図を眺める。拓見は「今、かなり凄い話しなかったか?」と、思いながら車の鍵を開けた。その刹那、篤崇は無気力そうな顔をやめていきなり叫び声を上げた。
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