プロローグ

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「お(まん)、那須野が原っちゅうところに行ってくれもはん」 「那須野が原、奥州街道の河に挟まってるのに水がない地獄みたいなとこでごわすか」 「そうじゃ、その不毛の地はだだっ広い平原が広がってるでごわす。そごぉ、遊ばせとうは勿体ないばってん。従兄弟の弥助(大山巌)と、あん平原の南をおいどんらの町の名前ばつけて加治屋って呼ぶことにしたばってん。そこに農場作ることんなったん」 「おいどんに、その平原ば行って見聞すればええばってんね」 「おいどんも東京ば、やることがあるけん」 西郷従道が大山巌と共に那須野が原は加治屋の開拓を始める明治十四年、農商務省長、兼、開拓使長官を任じられようとしていた(明治十四年の政変)それ故に貴族たちが続々と開拓に乗り出した那須野が原の情報が少しでも欲しい状況にあった。 そこで自分が信頼出来る薩摩藩からの同志である篤崇を先に那須野が原への先見開拓を命じ、那須野が原の様子を報告させようと思った次第である。 「おいどんも風のうわさでしか那須野が原の話ば聞かんとばい。実際に見聞ばして、その様子を伝えればええばってんね!」 篤崇は直立不動の体勢で敬礼の構えをとり、高らかに従道に宣誓を行う。 「城ノ元篤崇! 粉骨砕身! 那須野が原の見聞に従事します!」 こうして、篤崇は那須野が原の見聞に参加するのであった。
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