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第一章 明治から来た男
時の川は流れ流れ、明治、大正、昭和、平成…… 激動の時代をいくつも過ぎ、日本は令和の新時代を迎えた。
東京より150kmの距離を自動車で走らせ那須野が原に向かう二人組がいた。
ハンドルを握るのは大学教授、桐山拓見(きりやま たくみ)東京の大学で民俗学の教鞭を執る36歳の男性である。今回は那須野が原の開拓移民の明治当時の暮らしの調査のために那須野が原に来たのだった。
助手席に座るのは拓見の助手で大学院生の桜庭京陽(さくらば みやび)、24歳の女性である。助手という立場もあり拓見とは常に一緒に行動をとっているが、恋愛感情は微塵もない。それは拓見も同じである。
150kmもの距離をずっと座ったまませいか、京陽は尻を痛くし、時折、座席から尻を上げて痛みを和らげるのであった。
「先生、これからどこいくんですか? 那須野が原って結構、観光る場所ありますよね?」
京陽はダッシュボードより地図折りにされた那須野が原の観光パンフレットを出し、胸の前で広げた。パンフレットの隅に描かれた写真を見て思わず笑みが溢れる。その写真は深紫色に輝くワインボトルであった。
京陽は那須野が原特産のワインを飲むことを楽しみにしていた。彼女は女だてらに酩酊神とあだ名されるぐらいの酒豪であるために余計にである。それをよく知っていた拓見はやれやれと言った感じにため息を吐く。
「おいおい、ここには酒を飲みに来たわけじゃないんだぞ。今日の塒の予定のホテルまで我慢しなさい」
バレたか。運転していても横目でワインボトルの写真を見てニヤニヤしているのを見てるとは実にあざとい男だ。京陽は照れ隠しをするように舌を軽く出した。
「いつもどこでも着いてきてくれるから、お酒は好きなだけ飲んでもいいけど…… 明日に二日酔いで本調子じゃないって言うのが一番嫌だよ」
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