ジンベエザメ

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 K派遣会社に所属する俺はL会社の樹脂成型部門に夜勤専従者として派遣されて働くことになった。そこへアマチュアバンドのメンバーでありS派遣会社に所属する尾藤勇雄が昼勤夜勤の交代勤務者として派遣されて来て夜勤の時に俺たちは出会う事になった。  尾藤に普通の工員とは異なる雰囲気を感じた俺は、自分から話し掛けた所、尾藤の趣味が自分と同じエレキギターだと分かった為、尾藤と付き合う様になり、時に自分の借家または楽器屋のスタジオで尾藤と共にエレキギターの練習をし、時に楽器屋のスタジオで尾藤のバンドに加わってエレキギターを弾き、時にアマチュアバンドの演奏を見ながら飲食出来るライブハウス・バーへ行って尾藤のバンドの演奏を見ながら飲食し、時にそこで他のアマチュアバンドの演奏を見ながら尾藤とそのバンド仲間と飲食し、時に居酒屋にも寿司屋にも焼肉屋にもラーメン屋にも尾藤とそのバンド仲間と繰り出して彼らと飲食し、といった様に尾藤のお陰で出不精だったのに人が変わったように俺は行動的になった。  それで、くだんのライブハウス・バーが偶々俺の借家から近かった為、ロック好きの俺は、むしゃくしゃした休日の晩なぞは独りでも自転車でライブハウス・バーへ通う様になり、カウンターで焼酎をボトルで頼んでフロアの隅の方の暗がりの座席に寂しく陣取り、耳を聾するばかりの大音量の演奏と夜霧の様に漂う煙草の煙と度の高いアルコールに浸りながら独り、酩酊する事がよく有った。
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