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俺は世間擦れしていなくても俗人の付き合いが御座成りなものである事位は知っていたのだ。斯様に想像してみて矢張り女という者は現金な者だと改めて幻滅するのと共に直ぐに聡美に振られたショックから立ち直った。何故なら、これは俺の引かれ者の小唄でも何でもなく聡美の顔を飲み会の時は薄暗い中、横からしか見ていなかったし酔っていたのでよく分からなかったのだが、聡美にアタックした際、正面から間近でしっかり見た所、漫画「じゃりん子チエ」に出て来るヒラメちゃんみたいにやけに横に広い顔である事が判明し、のみならず、よくよく見ると、砥の如く胸がぺったんこである事も判明した為、胸パッドを付けて挑発する誤魔化しの利いたとんでもないブスだと鑑定し、あっさり気持ちを切り替える事が出来たのだ。
俺は飲み会以前にも職場で聡美を正面から間近で見た事が一度も無く遠目にしか見た事が無かったので良い感じに見えていたのだが、近くでよく見ないと分からないものだとつくづく思い、「夜目、遠目、傘の内とはよく言ったものだ」と先人に大い大いに感心した。
この頃、尾藤と付き合っていた事で前述した様に活動的な状態にあり車好きでもある俺は、実は聡美にアタックする前にも女としては珍しいスポーツタイプの日産シルビアに乗る車好きの女性派遣社員が気になっていたので、彼女がシルビアで会社の駐車場に現れ、駐車したのを見てアタックしようと駆け寄って行き、「いい音してるね、この車、マフラー替えたの」と声を掛け、初めて彼女を間近で見た所、えっ、こんな顔だったのか!とがっくり来てアタックを即刻、中止したという事が有ったばかりだったので聡美に振られた後、先人に大いに大いにと重ね重ね感心する事になった次第だ。
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