クリスマスの日に……。

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クリスマスの日に……。

私は、名波ロイヤルホテルのハウスキーピングの 仕事をして数年。ハウスキーピングとは、 お客様が気持ちよく過ごしてもらうために 部屋のベッドメイキングや清掃する人のことだ。 日々お客様に満足してもらえるように頑張ってきた。 しかし数年もやっているのに失敗も多く よく総支配人に怒られてしまう。 総支配人は、厳しくて鬼総支配人と言われている怖い人だ。 だが、とてもカッコ良くて素敵な人で 私は、密かに憧れていた。 「おい、佐藤。お前……またお客様の大切な時計を 間違えて捨ててしまったらしいな!? いつも良く見てから片付けろと言っているだろ」 「す、すみません」 今日は、間違えてお客様の時計をゴミと一緒に 捨ててしまった。 ゴミの山を漁り見つかったから良かったけど 見つからなかったら大変なことになっていた。 「見つかったから良かったものの……お前は、 いつもいつも……」 いつものようにガミガミと叱られ泣きたくなる。 なんで……上手く出来ないんだろう。 必死にやっていても皆のように上手くいかない。 「やる気がないなら辞めてしまえ!!」 そ、そんな……!? 確かに、こんなに失敗をする私は、 ホテルにとったら迷惑かもしれないけど 辞めてしまえと言われてショックを受けた。 説教が終わると私は、ホテルの庭園で泣いていた。 「……ひっく……」 「大丈夫?春菜。総支配人も酷いわよね。 あんなに怒ることもないのに」 友人で、同じハウスキーピングの里香に励まされる。 総支配人は、悪くない。それは、分かっている。 私がもっと注意をして片付けていたら こんな騒ぎにならなかった。そうではなくても クリスマスシーズンで今、忙しいのに。 周りに迷惑ばかりかけているし。 「……私が悪いの。きちんと確認しながら やらなかったから皆に迷惑かけちゃって そうじゃなくても忙しいのに……」 「何、言ってるの。 困った時に助けるのは、当たり前じゃない。 もういいから泣き止みなさい。それより今日は、 夜に巨大クリスマスツリーの点灯式があるんだから 芸能人も来るらしいし元気出しなさい」
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