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平成31年。
国立大学の後期入学試験、合格発表の日。
あたしは受験票を握りしめ、祈りながら掲示板の前に立った。
周りからは歓喜の声が聞こえてくる。
イマドキ合否なんてネットで判るんだから、わざわざ大学まで足を運んでくるのは合格したのが先に解っている人たちばかりだ。
ネットで確認せずにとにかく来てしまったのは、あたしくらいのものだろう。
今までのところ、9戦全敗。
ここが受かってなかったら浪人決定である。
怖くてスマホを見ることができないと思ったし、大学に張り出される方がネットより30分早いので、矢も楯もたまらずに来てしまった。
なのに、大学の門をどうしてもくぐることができずに門前でグズグズしていたら、ネットでの発表の時間を過ぎてしまったというわけ。
情けない…
お父さんもお母さんも、あたしからのLINEを待っているだろうなぁ。
お母さんは不合格だったらすぐに予備校に申し込みに行くって言ってたし…
あたしは覚悟を決めて、掲示板を見上げる。
自分の受験番号を呪文のように唱えながら順に番号を追っていった。
なかった。
半ば以上、予想していたこととはいえ、やっぱりショックだった。
浪人決定だぁ…
お父さん、お母さんごめんね。
あたしはあふれる涙を隠すために、必要以上にうつむいてその場を離れた。
とぼとぼと歩いて門を出て駅に向かう。
あーあ。
本当にダメだなあ、あたしって。
涙が止まらなくて、ハンカチが瞬く間にびしょぬれになっていく。
彼氏なし、友達なし、得意なことも趣味もなんにもない。
せめて勉強を頑張って大学生活に賭けようと思っていたのに。
部活もせず、何のための灰色の高校生活だったのか…
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