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お父さんとお母さんにLINEしなくちゃ。
駅の階段を登りながらスマホを取り出し、涙でかすむ画面に苦労しながら入力する。
改札を通り抜けて、電光表示板でもうすぐ電車が来るのを確認して、LINEを送信した。
ホームへの階段を降りて、黄色いブロックラインを越えてホームのギリギリに立つ。
もう死んじゃいたい。
どうせ、あたしの人生なんて、これまでもこれからも良いことなんて全然ないんだ。
『2番線に電車が参ります、黄色い線の内側へ下がってお待ちください』
アナウンスが流れるのと同時に、手に持ったままのスマホが震えた。
画面を見ると、ポップアップでお母さんからのメッセージが表示されている。
長そうな文章だ。
スマホをスワイプしてメッセージの全文を読もうとしたとき。
凄い勢いで階段を降りてきた人が、あたしの横でこけそうになりあたしに思い切り寄りかかってきた。
大柄な男の人に全身でぶつかられて、あたしは声も出せずバランスを崩しよろけて…
ちょうど電車が入ってきた、線路の上に落ちた。
ホームにいる人たちの悲鳴が響き、電車が急ブレーキをかける耳障りな金属音が辺りに満ちる。
背中を強打して、痛みに気を失いそうになりながら、身体を起こそうとした。
目の前に迫った電車の巨大な車体の、何故か運転手さんと目が合った。
運転手さんの、驚愕と恐怖の表情。
それが、あたしの見た最後の光景だった。
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