学級通信

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学級通信

俺の名前は、廣崎 佳翔(ひろさき かいと)。 年齢は43歳。 もう、かれこれ20年近く教師をやっている。 今は小学校の教師として勤務している。 ───ヒロサキ カイト──── いつも名前が読めないと言われてしまうが、 自分ではこの名前は気に入っている。 毎年、子供たちに渡す最初のプリントには 必ずフリガナを振るのだが──────。 “んー。今年は4年生かぁ。 去年より元気な子達が多そうだなぁ。 気合い入れていかなきゃだなぁ! …また、『先生、名前読めなぁい!』って 言われるんだろうなぁ。 この際、フリガナ無しにしてやるかぁ!ふふ。 子供たち自身で親に先生紹介させるように してみようかな。” そう。 俺は今年は4年生の担任となった。 さらに、今年は学年主任も任されている。 春休みも残りわずかとなった今、焦りながら 学級通信を作っているところだ。 毎年、最初の通信は、先生からの挨拶から 始まり、クラスの仲間紹介、先生の自己紹介、 保護者へのご挨拶がお決まりのパターンだ。 “何か毎回同じ通信だなぁ。 マンネリ化しているし、もっと面白く できないもんかなぁ。 まぁ、同じフォーマット使ってりゃ、 マンネリ化も仕方ないか…。” 毎回、同じことを思いながら通信を作る。 “先生の挨拶かぁ。 さて、今年は何て書こうかなぁ。 んー。 こういうの苦手なんだよなぁ…。” いろいろ悩んだ後、 そして、『ふぅぅ~』と小さく一息吐いて、 俺はPCの画面とにらめっこした。 ────────────────── 進級おめでとう。 4年生になって、高学年の仲間入りした みんなとの出会いをとっても楽しみに してきました。 去年は、みんな女の先生でしたね。なので、 『…うわぁ…。男の先生。いやだなぁ…。』 なんて思っている人もいるでしょう。 でも、安心してください。 先生は見た目よりも、うんとやさしいです。 先生がみんなにのぞむのは、全力で遊び、 全力で学ぶことです。 遊びも勉強も全力で取り組めば、 とても楽しくなります。 たくさん楽しむことは、たくさん成長することに つながります。 さあ、みんなですばらしい1年にしていこう! ───────────────── ここまで打ち込み、また『ふぅ。』と小さく 息をついた。 “こんな感じかなぁ~。 次は、クラスの仲間紹介か。 今年は33人。…女子が少し多いなぁ。” ────────────────── 【4年3組のなかま】 1.あいざわ たいき さん 2.あおき りひと さん 3.あんどう ゆり さん ・ ・ ・ 33.わたらい かな さん 以上33人です。仲良くしましょう! ────────────────── “よし!これで全員!! それにしても、今時な名前が多いなぁ。 そういう時代かなぁ。 みんな、芸名みたいやん。 まぁ、俺の名前も人のこと言えんかぁ。はは。 …さぁ、次は、自己紹介かぁ。 んー。 ………………。 あ!そうだ!! 今年は、クイズ形式にしてやろ!” ────────────────── 【4年3組の担任の先生】 ★おうちの人に教えてあげよう★ ・名前:廣崎 佳翔 ───何と読むでしょう? ・先生は何歳でしょう? ・住んでいるところはどこでしょう? ・毎朝、何で通勤してるでしょう? ・先生は結婚してますか?子供はいますか? ・先生の得意科目は?苦手科目は? ・先生の得意技はなんでしょう? ・先生の好きな動物は? ─────────────────── “4年生ならクイズ形式とか、 絶対食い付いてくるだろぉ! 反応してくれるといいけどなぁ。” 新しいクラスの生徒達の事を考えながら、 クスッと笑った。 そして、一呼吸して、またPCの画面を 見つめた。 “子供達はこれでいいとして、問題は 保護者宛の挨拶だよなぁ。参観日までは 会わないから、文字だけで、俺の第一印象が 決まるよなぁ…。うーん。何て書こう?” 『ふむぅ~。』と、腕を組ながら考えた。 そして、ゆっくりと文字を打ち込み始める。 ─────────────────── 【おうちの方へ】 保護者の皆様にとって、かけがえのない お子様をお預かり致します。 まずは、お子様が楽しんで学校生活を 過ごせるように一人一人の様子をしっかりと 見守っていきたいと思います。 至らない事もあるかと思いますので、 お気づきの事がございましたら、遠慮なく ご連絡ください。 1年間、どうぞよろしくお願い致します。 ─────────────────── “……こんな感じかなぁ。 うーん。ちょっと堅苦しいかな……。 ま、いっか。 あとは、学年通信か! 学年主任はこれがあるから大変だよなぁー。 これまた、面倒なんだよなぁー…。はぁぁ。 でも、来週から新学期だから頑張らなきゃな!” 学級通信を作り終えて、PCを一旦閉じ、 『ふぅぅ~』っと大きく息をついた。
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