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 三色すみれが咲き乱れる、長方形の花壇が平行に並ぶ上を通過して、建物に入ると、縞模様の密度がさらに増した。ゼブラの床、金銀の装飾が層をなして重なる壁、タータンチェックの椅子とテーブル。奥に進むほど、模様が細かくなり、縞に縞が重なっていく。  リールは城の中心部、市松模様の大広間に辿りついた。案内がなくても、縞の密集の度合いから、ここがもっとも高貴なる者の場所であるとわかった。  広間に”力”が凝集するのを感じたリールは、思わず床に平伏した。目を伏せる瞬間、縞の王の姿を見ようとしたが見えなかった。あらゆる種類の縞模様が集まった、この大広間自体が縞の王なのだと、リールは悟った。 <水玉の女王が、わしに何用だ> <わたしは、女王の使い、妖魚リール……> <使い魔の名など聞いておらぬ>  縞の王から七色の舌が伸びて、リールの脳を直撃した。リールは息絶えた。  妖魚の脳を舌で転がしながら、縞の王は水玉の女王の想いを感じとった。 <我がしもべ、シュトライーフはいずこ?> <御前に>  空間にふいに、赤緑黄のテープのような細い帯が現れ、ぐるぐると渦巻き、人型に凝集した。妖魔シュトライーフは床に跪いた。 <水玉の妖魔ドトアフリメールが、一万年幽閉されていた人間界から脱走した。知っているな?> <はい> <水玉の女王によると、ドトアフリメールはその際に世界に穴を開けてしまったらしい。世界のバランスが崩れる、と言ってきた>  市松模様の床に妖魚の死骸が転がっている。 <女王の憂いはわしの憂い。晴らしてくれ> <はっ> <シュトライーフ、人間界へ行け> <わかりました、わが君……一つお願いが> <何だ?> <その妖魚を頂きたいので> <よかろう。好きにせよ>
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