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 12月も半分が過ぎ、歩道脇に植えてある木々からは葉がすべて落ちています。木枯らしが吹き落ち葉が舞い、舞った落ち葉が道の隅にたまっています。外を歩く人の吐く息も白くなり、見る者に寒さを実感させるようで皆足早に歩いていきます。  それでもこの日は太陽が出ており、風もなく穏やかでいつもよりは暖かく感じられました。 「お母さん、疲れてたみただけど大丈夫かな」  小さな男の子が、側にいたおばあさんに心配そうに問いかけました。平日の昼間ということもあり、人通りも少なく車も通っていなかったのでのんびりと歩いています。どうやら住宅街を散歩しているようです。 「出て来た時はちびちゃん達も寝ていたから、今はゆっくり休んどるだろう」 おばあさんは安心させるように言いました。  男の子には、最近兄弟ができました。三つ子の元気な赤ちゃんでしたが、お母さんはその子たちの世話で忙しく、あまり男の子をかまってあげることが出来なくなってしまいました。そこで忙しいお母さんに代わり、近くに住むおばあさんが散歩へ連れ出したのです。その言葉に安心した男の子は、元気に歩き出しました。  心配事が無くなると今度は別のことが気になりただしたようで 「おばあちゃん、どうして息が白いの?」 自分の吐く息をみながら尋ねます。  男の子は最近、見るもの聞くもの全てが気になるようで、「あれはなに?」や「どうして?」と大人たちによく質問してきます。今日は、どうやら自分が吐く息が気になるようです。 「息を手にはぁ~と出してごらん」  おばあさんは立ち止まり、手に息を吐きます。それを見た男の子は、同じように自分の手に「はぁ~」と息を吐きました。 「吐く息が温かいだろう。それに比べて今は外の空気がうんと冷たいから、吐いた息が冷えて白く見えるんだよ」 「温かいと、冷たいが一緒だと白くなるんだね!」  そう言って、男の子はもう一度「はぁ~」と大きく息を吐いて白い煙をたくさん出しました。
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